気づけばいつも探してた
4.私って……
4.私って……

竹部さんとの五度目のデート。

いつものように体型をカバーする濃紺のオーバーワンピースにベージュの腰丈のジャケットを合わせ、淡いイエローが基調のストールを首に巻く。足下は焦げ茶のショートブーツ。

こんな格好してたら、いつだったか翔に「何か月ですかぁ?」なんて笑われたっけ。

でも、竹部さんは絶対そんな女心を傷つけることは言わないだろう。例え頭の中でそう思ってたって。

デートの前日、竹部さんからの電話でどこに行きたいか尋ねられた。 

途中でまた呼び出されるかもしれないし、一人でも大丈夫なところと思い考えたあげく映画と答える。

映画だったら例え一人になったって、観ていられるし、映画館のすぐ近くに最近できたハワイアンカフェもある。

デートだっていうのに、一人で過ごせる場所を軸に考えてるのはどうかと思うけど、エリート外科医と付き合っているからにはそうでもしないと身も心ももたないような気がしていた。

今まで付き合ってきたどんな男性よりもイケメンで頭もよく品もある。

ただ、こんなに相手の立場を最優先にした関係はなかったかもしれない。

彼の仕事はサラリーマンとは違うから、そうすることは必然だって思っているけれど、なぜだかいつも本当にこれでいいのか?って自分自身の言動に自信が持てないでいる。

今までぼんやりノー天気に生きてきてきたから、初めてのタイプに戸惑ってるだけなんだろう。そのうちこういう関係にも慣れてくるよね、きっと。

「この間はゆっくり時間がとれたと言ってたのにバタバタと帰ってしまってごめん」

映画の座席に二人並んで座っている横で彼が前を向いたまま言った。

薄暗い光の中で彼のきれいな横顔がぼんやり見える。

「いえ、大丈夫です。忙しいのにいつも時間とってくださってありがとうございます」

竹部さんは私にちらっと視線を向けると寂しそうに微笑む。

「美南ちゃんは本当に純粋で素直で一緒にいると申し訳なくなる」

「え?どういう意味でしょうか?」

思わず目を見開いてぼんやりとしか見えない彼の横顔を凝視した。
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