気づけばいつも探してた
「あら、お疲れ様。もう戻ったの?」

立花さんは顔だけこちらに向けると、若干迷惑そうな表情で眉間にしわを寄せた。

早く戻っちゃ悪いのかい!と叫びそうになったのをぐっと堪える。

一人きりの総務部で、パソコンを立ち上げて何やら見ていたみたいだけど、彼女のことだもの、絶対仕事じゃないよね。

また自分の好きな化粧品のサイトを見まくってたんじゃないかしら。

はぁ。

でも、こんな風によく知りもしないくせに穿った見方をしてしまう自分も嫌だった。

私は敢えて立花さんに笑顔を向け「一人で総務部待機は大変だったんじゃないですか?お疲れ様です」と言ってみる。

途端に立花さんの黒いアイラインがばっちり引かれた一重の目が弓のようにしなやかに曲がる。

「ええ、まぁね。でも大したことないわよ」

そう言いながら明らかに優越感に浸ったような表情で口元を緩め、右手をひらひらと振った。

「また二時間後に会場に戻りますので、よろしくお願いします」

「ええ、任してちょうだい」

私がペコリと彼女の前で頭を下げると、萌も慌てた様子で私に続き「お疲れ様です」と小さく言った。

そして、そのまま私と一緒に席に戻ろうとした萌に立花さんが「ちょっと、若葉さん」と声
色強めで呼び止める。

「は、はい?」

萌の声がわずかにうわずり、立花さんに顔を向けたその頬は赤かかった。

思わず私も立ち止まり、立花さんの方に顔を向ける。

彼女はちらっと私に視線を向けると、口を片側引き上げて「あなたは関係ないから先に戻っててちょうだい」と言わんばかりに首を横に振った。
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