気づけばいつも探してた
また萌は立花さんに何か嫌なこと言われるんじゃないだろうか。

でも、これ以上私が萌のそばから離れないのも逆に変に勘ぐられるように思い、耳をそばだてながら自分の席にゆっくり戻った。

自分のデスクの書類を整理しながら全神経を耳から聞こえてくる声に注ぐ。

「若葉さん、昨日の夕方頼んでおいたスケジュール管理表と経費伝票はもうできてるの?どこ探してもないんだけど」

……夕方頼んだ??
それでなくても昨日は今日の準備で遅くまで慌ただしかったってのに。

「すみません。私のUSBに入れてます」

「あなたのUSB?もともとは私のUSBでしょう?私もいつでも見れるところに置いてくれないと困るわ」

「はい、気を付けます」

……もともと私のUSBって、それ関係ある?引き継いだ時点であなたのものじゃないのよ。

萌は自分のデスクの引き出しの奥からUSBを取り出して立花さんに手渡した。

立花さんはそのUSBを受け取ると、足を組み替え頬杖を突きながら萌の顔を見上げた。

とっても意地悪な顔で。

「で?」

「え?あの、こちらがそのUSBですけど……」

「これ渡された私がいちいちこのUSBをパソコンからひらいてプリントアウトしろってこと?受付嬢に選ばれたからって、若葉さんも随分えらくなったのかしらねぇ」

は??

何言ってるの、この人は。

それならそうとプリントアウトしたものを渡すよう指示すればいいのに。

しかも、受付嬢に選ばれなかったのは自分がそう仕向けたくせに。

私のイライラはピークになっていた。

どう反応したって反撃されるこの状況に、萌の横顔はただただ表情を失い固まっていた。
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