気づけばいつも探してた
こんなに居心地のいい友達関係は、ある意味女性同士のとはまた違っていた。

彼氏と別れた時に慰めてもらったり、男目線でのアドバイスも、すごくためになったし。

女同士だと、色んなやっかみがあったりで言えないことも翔には包み隠さず言うことができた。

これは、お互いが男女として意識したら終わるものだってことは頭の隅の方で理解もしていた。

どちらかが恋心を抱いたらそこで終わり。

翔はそうならない唯一友達としてやっていける貴重な相手なんだ。

「よく考えたら、俺たち、友達っていう割にはお互いのことほとんど何も知らないよね」

テーブルの中央に置かれたアクアパッツァを取り分けていた翔がふいに私に顔を向けて言った。

「そうね。別に知らなくても何も問題ないんじゃない」

「まぁそうだけどさ。知りたくはない?俺のこと」

彼の顔をまじまじと見つめた。

相変わらず端正な横顔。きれいな瞳、しなやかにとりわける手はとても器用だ。

「はい、どうぞ」

そう言って取り分けたアクアパッツァを私の前に差し出した。

「知ったところで何も変わらないもの」

私は皿を受け取りながらそう返した。

「それは、俺に関心がないってこと?」

「関心?」

そんなこと考えてもみなかったからいきなり聞かれても即答できない。

ただ、翔のことを知りたいって思うことは、付き合って初めて彼の下の名前を呼ぶことに似てるような気がした。

今さら的な。

なんとなく気恥ずかしいような。
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