気づけばいつも探してた
『出るのはやっ!』

翔が電話の向こうでケタケタ笑った。

「かけてくれてきた相手を待たせちゃ悪いと思っただけよ」

『そうなの?また外科医の彼に置いてけぼりにされてんのかと思った』

なんでわかるんだろう。

翔は大抵私のことはお見通し。

察してくれるのはありがたいんだけど、いつもあまりに図星なのが悔しくて素直に喜べない。

「もうちょっとデリカシーってのはないの?そこさえ押さえれば翔もそこそこイケメンだしモテると思いますけど」

『そこそこイケメンって、もう既に結構モテてるんですけど』

確かにね。実は翔はかなりのイケメンの部類に入る。

今付き合ってる彼に引け劣らず長身で180以上はあるし、きれいなアーモンド型の二重の目元もすっと高い鼻も、形のいい唇も、さらさらの前髪も誰が見ても申し分なかった。

それに、翔は彼よりも優しい目をしていた。彼と大きく違うのはあの官能的な色気がないってことくらい?

「で、何の用?」

翔はプッと吹き出して言った。

『待ってましたと言わんばかりの美南に何の用って言われる筋合いはないと思うけどな。まぁいいや。これから俺の晩飯に付き合わない?』

「いいわよ。私もちょうど今から食べに出ようと思ってたとこなの」

『なら丁度よかった。いつもの居酒屋【大吉】で待ってる。端っこのカウンター席にいるよ』

「オッケー」

電話を切ると私は素早く化粧を直し、小さな手提げバッグに財布とスマホを入れて部屋を飛び出した。

【大吉】は、隣駅前の居酒屋だ。翔の住んでる町と私の町の丁度真ん中に位置している。

大抵会うときは大吉と決まっていた。

これまた色気のない居酒屋を毎度選ぶのが翔らしい。
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