気づけばいつも探してた
「この通り、元気元気」

祖母は嬉しそうに笑いながら自分の頬をぱんぱんと叩く。

もともとふくよかで太りすぎじゃないかしらと思っていた祖母も今では一回り小さくなって張りのあった頬には深いしわが目立つようになっていた。

「来てくれて嬉しいよ。忙しいのにありがとうね」

そう言うと、私の冷え切った両手をそっと自分の手で包みさすってくれた。

いつも行けばこんなに喜んでくれるのに、自分の勝手でなかなかここに来れないことが情けなくなる。

「おばあちゃん、来週一時退院できそうだって」

母が祖母の衣服の整理をしながら私に言う。

「え?本当?退院なんてすごく久しぶりじゃない?」

私は目を見開いて祖母の顔を見つめた。

「そうなんだよ。帰れる時に帰っとかなくちゃねえ。かわいいみーちゃんと少しでも長くいたいもの」

「そんなこと言わないで。おばあちゃんはまだまだ元気でいてもらわなくちゃならないんだから」

胸の奥からぐっと込み上げてくるものを押し込み祖母から視線を逸らす。

「帰ったら食べたいものとか、してほしいこととかある?」

私は祖母に持ってきたチョコレートをバッグから取り出し手渡した。

「特にないねぇ……」

祖母は私が渡したチョコレートをおいしそうに口の中で転がしている。

「あ!」

急に祖母が大きな声を出したので、私と母も驚いて顔を見合わせる。

「なに?どうしたの?」

「もし、叶うならみーちゃんと一緒に姫路城行きたい。ずっと一緒に行くのが夢だったからね」

祖母は少女のように目を輝かせながら私を見つめた。
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