気づけばいつも探してた
姫路城?

まさか、祖母からそんな提案が出るなんて思わなかった。

この前、翔が一緒に行くよって言ってくれてたけれど、まさか本当に行けるだなんて思ってもみなかったから。

私は黙ったまま私の手を握る祖母のしわしわの手に視線を落とした。

「やっぱり難しいかい?遠いもんね、ここから姫路城は。でも、あの真っ白な白鷺城と言われる美しい城をみーちゃんと一緒に見たいなって、ここのところずっと病院で考えてたんだよ」

「今更姫路城って。ほかにもっと近くで見たいお城はないの?」

母が困った顔で腰に手を当てて祖母を見下ろした。

「……行こう」

「え?」

祖母と母の声がシンクロして、そうつぶやいた私に二人の視線が注がれた。

「行くってどうやって?」

母がまた余計なこと言って!みたいな表情になっている。

「もし、病院の許可がおりるなら、ちょっとお願いできるかもしれないの」

「お願いって?」

「車でおばあちゃんと私を姫路城まで運んでくれるって言ってくれた人がいるんだ」

「言ってくれた人って誰?」

母の声色がその『人』の存在を意識したのか一瞬変わった。

そうだよね。

母には翔のこと話したこともないし、そんな親しい男友達がいるなんて思ってもいないだろう。

「その人って、美南が最近お付き合いしてる竹部さんっていう男性?」

竹部さんのことはこの間母にちらっと話していた。

「ううん、違う人」

「違う人?!」

母の声が裏返る。

祖母は嬉しそうに笑いながら手を叩いた。

「みーちゃんも隅に置けないねぇ。立派立派!」

「もう、おばあちゃんたら、何が立派よ。お母さんは聞いてないわよ、そんな人のこと」

あー、翔のことは説明しだすと話が長くなるからこの場で話すのは正直面倒なんだけど。

でも、ここまで来たらしょうがない。
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