気づけばいつも探してた
お酒をしばらく交わしながら、本題へ話を進めてみる。

いきなりは、やっぱりね。

それは、私なりのささやかな気遣いだったりする。

見た目と違って、一応女性らしく気遣えるところもあるってこと。

「あの後、結局USBは見つかったの?」

萌はお酒の入ったグラスをテーブルに置くと、視線を落としたまま話し始めた。

「あれからずっと立花さんは机の中をひっくり返してUSBを探しておられました。私も自分の仕事が溜まっていたので、とりあえず一緒に探すのは一旦中断して仕事にとりかかったんです。そのあと、見つかったのか見つからなかったのかはわからなかったんですが、原田チームリーダーから呼ばれた立花さんが会議室に入っていくのを見かけました」

「原田さんはUSBがなくなってることは知ってたの?」

「はい、チームリーダーが先週立花さんに会計処理を頼んだ時に今USBが見当たらないと伝えていたようです。チームリーダーもすぐに見つかるだろうとあまり気にされていなかったみたいですが、その時、立花さんが私に渡して戻ってきてないようなことを言っていたらしく、今週に入ってから何度かチームリーダーに『見つかったか?』と尋ねられていました」

やっぱり到底納得のいかない話だわ、とイライラしながらも萌の話の続きを身を乗り出して聞く。

「17時前になってチームリーダーから突然会議室に呼ばれたんです」

「で?」

「さっき立花さんから報告を受けたが、私のバッグの中からUSBが見つかったらしいねって」

私は目を大きく見開いて、萌の顔をじっと見つめた。

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