気づけばいつも探してた
車窓から見える空はとても穏やかな青だった。

流れるようなすじ雲が少し浮かんでいるだけでいい天気。

天気予報もこの二日は雨は降らなさそうだから安心だ。

タクシーで高速に乗り、一時間ほどで空港に着く。

病院から借りている折り畳み式の車いすを広げ、祖母を座らせると翔との待ち合わせ場所に急いだ。

速足で着いてくる母の表情が心なしか緊張しているように見える。

そりゃそうだよね。

これから唯一の私の男友達とお初にお目にかかるわけだし。

しかもどんな素性の人間かもわからない相手。
ただ、互いに城が好きで出会ったっていうだけだから。

待ち合わせのベンチに座っている翔を見つけた。

翔もすぐに私を見つけ笑顔で立ち上がる。

そして、私の後ろから母が着いてきているのに気づき、少し驚いた顔で慌てて頭を下げた。

「ごめん、どうしても母が挨拶したいっていうから」

私がそう告げると、母は翔に深々と頭を下げる。

「初めまして。美南がいつもお世話になっております。この度は、本当にありがとうございます」

「いえ、こちらこそ一緒に行かせていただけるのはありがたい上にお邪魔なことで申し訳ないです。おばあ様のことは僕が責任持って帰るまで見させて頂きますので」

「……あら?」

頭を上げた母が首を傾げ、まじまじと翔の顔を見つめる。

「あの、どこかでお会いしたことあるかしら?」

翔は目をぱちくりさせながらも、自分も何かを思い出そうとしているのか母の目を見つめ返した。

「っていうか、翔さん、すごくイケメンだからそんな見つめられたら恥ずかしいわ」

「もう!お母さんったら!」

年甲斐もなく、恥ずかしそうに頬を赤らめた母に思わず突っ込んでしまう。

「あなたが翔さんかい?」

車いすに座っている祖母の声がした。
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