気づけばいつも探してた
「はい、初めまして。翔です。今日からよろしくお願いします」

翔は車いすの前にひざまずき、そっと祖母の手の上に自分の手を重ねた。

あまりに突然の動作にびっくりしたけれど、それはとてもスマートで自然だった。

ひざまづいてくれた翔の顔を祖母は嬉しそうに目を細め、何度も頷いている。

そんな二人の姿に、なぜだか泣きそうになった。

だめだめ。

どうしてこんなことで私が泣かなくちゃならないの。

顔を上げると、母もまた目頭を押さえていた。

二人の光景に私と同じ気持ちになったんだろうか。

嬉しかった。

私は翔のその気持ちが、とても嬉しかったから涙が出そうになったんだ。

軽く息を吐き、気持ちを落ち着けると「じゃ、そろそろ行こうか」と祖母と翔に声をかける。

翔は腕時計に目をやると、「そうだね」と言ってゆっくり立ち上がった。

「母と、美南をよろしくお願いします」

鼻声の母が再び翔に頭を下げる。

「今生の別れじゃあるまいし泣きすぎだよ」

私は母の肩をポンポンと叩いて笑った。

「いってきます」

翔は母に優しく微笑むと自分の大きめのバッグを肩にかけ、祖母の車いすのハンドルに手を置く。

そして、私たちは目を潤ませている母に手を振り、手荷物検査の方へ歩みを進めた。

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