気づけばいつも探してた
ほんとだ。

祖母の言うように翔はまるでお医者さんみたいだ。

慣れた手つきで血圧を測りジャケットの内ポケットから手帳を取り出し、何やら書き込むような姿も。

「んー、まぁ少し高めだけど、許容範囲だな。昼前でお腹もすいてるし少し上がってるのかもしれない。おばあちゃんは降圧剤は飲んでる?」

「え、ああ、うん。確か持ってきた薬の中に入ってたと思う」

「じゃ、少し早いけれどここでお昼食べて食後に降圧剤飲んでもらってから姫路に向かおうか。その方が安心だ」

「うん、わかった」

なんだか、あまりの手際のよさに申し訳なくなる。

私の祖母なのに、私以上に気にかけてくれて。

それでいて、翔だからなのかな……すごく楽だった。

空港内のレストランで軽く昼食をとって、翔の手配してくれたレンタカーでいよいよ姫路に向かう。

車は大型のワゴン車で、車いすも荷台に余裕で入るし、座席も広々としていて快適だった。

祖母も椅子を寝かせて道中の三時間は少し休めたようだ。

思っていたよりも道路は混んでおらず、予定通りだと翔は顔をほころばせる。

城近くの地下駐車場に停め、エレベーターで地上に上がると城郭が遠目に見えた。

お堀の前には広大な公園が広がっていて、平日だというのにたくさんの人が列を成して城を目指している。

「おやまぁ、すごい人。やっぱり姫路城はきれいだねぇ」

白鷺城と呼ばれるだけあって、白くて大きな天守閣がお堀の向こうに顔を出していた。

その美しい城を前に、祖母が両手を合わせてまるで拝むようにして見つめている。

ずっと来たかった城だもんね。

「バリアフリーだからもっと近くまで行けるよ」

祖母の肩に手を置き声をかけると、私の方に顔を向け嬉しそうに頷いた。

「城の中にエレベーターがあれば天守閣まで連れて行けるのにな」

翔が悔しそうに目の前に迫った城郭を見上げる。
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