気づけばいつも探してた
部屋に入ってきた翔はベッドで休んでいる祖母のそばに歩み寄る。

「おばあちゃん、気分はどう?」

「ああ、翔さん。お陰さまで大丈夫だよ」

祖母もすっかり馴染んだ笑顔で翔に答える。

そして、翔は祖母の額にさりげなく手を当てた後、持参した血圧計で祖母の血圧を測りながら私に顔を向けて言った。

「少し血圧が高いな。おばあちゃんは疲れてるだろうから、今日はこのまま部屋で休んでもらおう」

「そうね。だけど食事はどうしようか?近場でホテル内のレストランででも食べる?」

「いや、おばあちゃんは動かさない方がいい。部屋に食事を運んでもらうよう手配済みだから」

「部屋に食事ってまさかルームサービスを手配してくれたの?!」

ルームサービスなんて、このかた二十七年生きてきて初めてのことだ。

そんなサービスをしらっとした顔で手配する翔を何度も瞬きしながら見つめる。

「俺の顔に何かついてる?」

「いや、そういうんじゃなくて、翔はルームサービスよく使うの?」

「たまにね。外に食べに出るの面倒な時とか」

「そ、そう」

翔は祖母の腕からカフを取り外すと腕時計に目をやり「今十六時だ。十八時にはここに食事が運ばれてくるから、一旦俺は部屋に戻るよ。何かあったらすぐ連絡して」と言った。

「わかった」

そう答えた私に彼は頷き微笑むと、立ち上がり祖母に軽く会釈をして部屋を出ていった。

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