気づけばいつも探してた
なんだか恥ずかしくなって顔が一気に熱くなる。

「ったく、何言ってんだよ」

翔が頭を掻きながら顔を背けた。

どういう反応をしていいのかわからず火照った頬に手を当て紘一さんを見つめていると、紘一さんはくくっと声を殺して笑った。

「まだ今はあまり突っ込まない方がよさそうだな。じゃ、翔、それから翔のお友達の彼女さんもまたね」

紘一さんは私たちに手を振ると、腕時計に目をやり足早に廊下の向こうに去っていった。

二人きりの廊下。

なんだか気まずい空気が流れている。

「翔ってお医者様なの?」

何も言わず黙ったままの翔に思い切って尋ねた。

「ん?そんなこと美南にはどうでもいいだろう?」

「うん、どうでもいいけど。さっきの話聞いちゃったから」

「まぁね。じゃ、もし俺が医者だったら美南は俺に対する意識が何か変わる?」

「変わらない」

「じゃ、それでよし。とりあえず、おばあちゃんが点滴終わるまでもう少しだからここで待っていようか。俺は心配だから病院に泊まるよ。美南はホテル戻ってて」

「いや、それなら私が病院に泊まるわ」

「いいよ。多分おばあちゃんも俺がそばにいた方が安心だろうから」

不敵な笑みを浮かべて言った翔の腕を軽くパチンと叩いた。

「失礼ね!」

そして、ようやく戻った二人の空気に安堵して顔を見合わせて笑った。

いつものように。


何も変わらない。

こうやって顔を見合わせて笑っていられる私たちの関係はきっとこれからもずっと変わらないよね。
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