気づけばいつも探してた
電話を切った途端、一気に疲れが押し寄せてきた。

時計はもう23時前を指している。

病院で、翔が買ってくれたおにぎり二個しか食べてなかったから、さすがに血糖値の下がった私の思考も体力も限界に達していた。

結局ルームサービスは体験できなかったし。

ふぅーと大きく息を吐き、そのままベッドに倒れ込んだ。

倒れ込んだと同時に部屋の扉にノック音が聞こえる。

こんな時間に誰かしら?

「は、はい!」

慌てて体を起こし扉の前で様子を伺うとどうやらホテルマンのようだ。

「夜分に申し訳ございません。翔様からこちらにお持ちするようご連絡ありましたので」

「翔から?」

ゆっくりと扉を開けると、腹ペコの私の嗅覚を刺激するおいしそうな香りがホテルマンから立ち上っている。

いや、そうじゃなく、ホテルマンの横に置かれたサービスワゴンにとても豪華な料理が所狭しと乗っていた。

「ルームサービスのディナーをお持ちしました。すぐにご準備させて頂きますね」

ホテルマンはにっこり笑うと、料理に目が釘付けになっている私の前をワゴンと一緒に通っていった。

ルームサービス、あきらめてたルームサービス!

部屋の丸テーブルに真っ白なテーブルクロスが引かれ、その上にワゴンの上からテーブルへと料理が運ばれていく。

「お待たせいたしました。どうぞごゆっくり」

ホテルマンは深く一礼すると、部屋を出ていった。

テーブルの上にはパスタ、チキン、サラダ、スープ、そしてフルーツがたくさん。

こんなに一人じゃ食べられないよー。ううん、絶対完食する!

翔、粋なことしてくれるじゃない。

ほんと、翔ってどうしてこんなにタイミングよく私の心の中が読めるのかしら。

さぁ食べようと椅子に座った時、さっき抱きしめられた温かくて大きな彼の胸を思い出す。

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