イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「そんなん、俺もだ。見てるだけで癒される存在とか、遭遇したのお前が初めてだな」


剣ちゃんは頬づえをついたまま、優しい眼差しで見つめてくる。

それがくすぐったかった私は、ゆるみっぱなしの顔を隠すようにうつむいた。


「遭遇って、人を未確認生物みたいに言って……」

「ある意味、そうだな」

「ひどい!」

ばっと顔をあげて、私は抗議する。

「ははっ」


照れ隠しに怒れば、剣ちゃんは豪快に笑った。

その顔を見て、なんでか恥ずかしさが鎮火していく。

この笑顔が見られるなら、未確認生物でもエイリアンでも、どんとこい……なんて。

そんなふうに思ってしまう私は、剣ちゃんに夢中だ。



「ご飯代、私が出すよ!」


レストランを出た私は、お財布を手に剣ちゃんに詰め寄っていた。

というのも、私が気づかないうちに今日のお会計のすべてを剣ちゃんがすませてしまったのだ。


「映画のチケットも買ってくれたし、おごられてばっかりで申し訳ないし……」

「俺、お前のボディーガードやる前は家出たくてバイトしてたし、貯金もあるからいいんだよ」

「でも……」

「くどい、もうこの話は終わりだ。ほら、次どこ行きたいのか言えよ」


当たり前のように私の手を握る剣ちゃんに、私の胸は高鳴る。


「ありがとう、剣ちゃん。うーん、そうだな。今度の校外学習に着ていく私服を買いたい!」

「りょーかい」


剣ちゃんは私の手を引いて、エレベーターで8階に上がると、ファッションフロアにやってきた。


「あ、あれかわいい!」


ガラスウィンドウのマネキンを見て、ほしい系統の服がありそうなショップに入る。

さっそく花柄のワンピースを手に取った私は、身体に当てながら剣ちゃんに見せた。


「ねぇねぇ、これとかどうかな」

「丈が短すぎる。却下」

「じゃあこれは?」

「胸もとが開きすぎだろ。却下」


彼氏の許可が下りない……。
なかなか厳しいなあ。

剣ちゃんは私の手から服を取り上げて、勝手にもとに戻すと、代わりに白い小花がプリントされた襟付きのワンピースを渡してくる。


「これとか、似合うんじゃね?」


なんだかんだ一緒に洋服を選んでくれる剣ちゃんに、うれしくて胸がいっぱいになった。


「うんっ、これにする!」

剣ちゃんに選んでもらった服を抱きしめる。


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