イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「じゃ、残りのリストは俺にやらせろ」

「え、なんでそうなるの!?」

「主の命令は絶対、だろ?」


ニヤッと笑った剣ちゃんに、私は視線をさまよわせる。


「でも、今日は私が剣ちゃんの給仕係だし……」

「俺、お前と一緒にいるようになって気づいたんだけどよ。好きな女にはとことん世話を焼きたい性質らしい」


剣ちゃんは問答無用で私の服のボタンに手をかけると、ひとつずつ外していく。


「じ、自分でできるからっ」


慌てて、剣ちゃんの手を押さえようとした。

けれど、逆に両手首を剣ちゃんにつかまれてしまい、頭上にまとめ上げられてしまう。


「俺の命令は?」

「あ……絶対、です」


私は抵抗をやめて、剣ちゃんに服を脱がしてもらった。

さすがに裸を見られるのが恥ずかしかった私は、タオルを身体に巻いて剣ちゃんに背を向ける。

どうしよう、どうしよう!

前にもタオル姿を見られたことはあった。

だけどそのときは変なメールが来て取り乱していたこともあって、気にする余裕はなかった。

なのに今は、剣ちゃんを意識しちゃって恥ずかしい。


「じゃ、先入ってろ」

「え、先?」


驚いて振り返ると、剣ちゃんはワイシャツを脱いだ状態だった。

前から力持ちだなとは思ってたけど、剣ちゃんって結構筋肉ついてるんだな……って、私はどこを見てるんだろう!?

顔を両手でおおうと、剣ちゃんがくくっと喉の奥で笑うのがわかる。


「これから嫌でも見ることになるのに、今からそんなんで大丈夫かよ」

「大丈夫じゃないっ」


それに、これからって……。

まさか、まだ付き合って間もないのに、そういうところまで行っちゃうってこと!?

混乱して、その場に足が縫いつけられたみたいに動けなくなった。

剣ちゃんは腰にタオルを巻くと、その場でフリーズしている私の手を引いてお風呂場に入っていく。

それからあれよあれよという間に、気づいたら頭を洗ってもらっていた。

どうして、こんなことになったんだっけ。

さすがに身体は死守したけれど、一緒に湯船につかる羽目になった私は途方に暮れた。

私が大きな浴槽の端で、剣ちゃんに背を向けていると後ろから声が聞こえてくる。


「あちー」


その声にびくっと肩を震わせると、剣ちゃんがため息をつく。


「まだ慣れねぇの?」

「慣れるわけないよっ、急すぎるんだもん」

「なら、ショック療法だな」


ショック療法?

頭の中に『?』マークがいくつも浮かぶ。

すると、ジャボジャボとお湯をかきわけながら剣ちゃんが近づいてくる気配がした。

ま、まさか!

勢いよく振り返ろうと思った瞬間――。


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