イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「剣ちゃんが傷ついたり、危険な目に遭うたびに怖くなるから……それに耐えられる自信がなかったの。でも、私は剣ちゃんを好きになった」

「愛菜……」


私は驚いている剣ちゃんの目をしっかりと見つめた。


「なにがあっても私は……剣ちゃんのことを諦めるなんてできない。それくらい、私も剣ちゃんを求めてる」


剣ちゃんははっきり『求めてる』と言い切った私に、息を呑んでいた。


驚いている様子の剣ちゃんに、私は強気に笑う。


「だから、一緒にいるために、ふたりで危険を乗り越えていけばいいんだよね」

「……っ、やっとわかったか」


剣ちゃんは照れくさそうに笑って、「誰か!」と叫びながらエレベーターの扉を叩く。

私も剣ちゃんに負けないように大きな声で「閉じ込められてるんです!」と叫んで扉を叩いた。

すると、扉の向こうから……。


「森泉、矢神、ディオ王子、そこにいるのか!?」


学くんのくぐもった声が聞こえてくる。

私たちは顔を見合わせて――。

「「学!」」

「学くん!」

学くんの名前を呼んだ。



エレベーターに閉じ込められた日から数週間後。

あのあと、私たちは念のため病院に連れていかれた。

幸いにも、3人ともケガも病気もなく検査の結果は良好だった。

学くんがすぐに助けに来られなかったのは、雅くんに校門の前でガラの悪い男たちがたむろっているので、なんとかしてほしいと頼まれたかららしい。

その対応に追われていて、私たちを発見するのに時間がかかってしまったのだとか。

とはいえ、小一時間で出てこられたのだからツイていたと思う。

そして今日は一ヶ月の留学を終えて帰国するディオくんの見送りに、みんなで校舎前のロータリーに来ていた。


「剣斗、私たちをエレベーターに閉じ込めた人間は、私とは無関係の者たちでした」


リムジンを待たせて、ディオくんは剣ちゃんのところへやってくると、そう報告する。


「調査したのか?」

「はい。狙いはあなたたちだと思います。剣斗と愛菜は、狙われる理由に心当たりがありますか?」

「ああ、まあな」


剣ちゃんが『話してもいいか?』と言いたげな顔をしたので、うなずく。

私の意思を確認した剣ちゃんは、立て続けに起こった事件のことを話した。


「なるほど、日本は平和で安全な国だと聞いてましたが、どこにでも悪い人間はいるのですね」

「まあ、相当レアケースだけどな」


苦い顔をして答えた剣ちゃんに、ディオくんが「それにしても」と口を開く。


「そんな危険な状況なのに、なぜもっとセキュリティレベルを上げないのですか。私なら、SPでガチガチに固めるところですよ」

「もちろん親父……警察とも連携は取ってる。けど、こいつも毎日、学園でも家でもSPに囲まれてたら息が詰まるだろ?」

剣ちゃんの決意を宿した瞳が私に向けられる。

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