イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「こんなふうに、襲われてもいいのかよ」


脅すようにすごんでくる剣斗くん。

だけど、剣斗くんの前髪が頬にかかって、くすぐったくなった私はくすくすと笑い出してしまう。


「剣ちゃん、怖い顔! ぷぷぷっ」


笑いが止まらない私に、剣斗くん――剣ちゃんは宙を仰ぎながらため息をついた。


「……この状況でよく笑えんな。あと、その剣ちゃんってのはなんだ」


げんなりした顔で、剣ちゃんは私の上からどく。


「萌ちゃんが、仲良くなるならニックネームで呼ぶのがいいって、教えてくれたの。剣ちゃんって呼ぶと、本当に距離が近づいた気がするね!」

「俺はしねぇよ。つうか……」


剣ちゃんは改めてこちらを見つめると、こつんと私の頭を軽く小突いてくる。


「無防備で危機感もねぇ。のへらーとしてるし、ちょっと優しくされりゃぁ誰にでもついていきそうだな、お前」

「そんなことないよ! 私、本当に優しい人かどうかは目を見ればわかるんだ」

「嘘くせぇな」


疑わしそうな目をする剣斗くんの胸を、私はポカッと軽く叩く。


「もう、本当の本当だよっ。剣ちゃんは、すっごくいい人だって、私にはわかるんだから!」


拳を握りしめながら力説したあと、私は頬を膨らませる。


< 35 / 150 >

この作品をシェア

pagetop