イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「剣ちゃんのほうがずっとずっと危険な目に遭ってるのに、これくらいのことで私がひるんでなんていられないよ」

「お前……どうして、そんなに気丈でいられんだよ」


どうしてか、なんて……。
当然、答えはひとつしかないよ。

私はまっすぐに剣ちゃんを見上げて、ニコッと笑う。


「それは剣ちゃんのおかげかな」

「いや、俺はなんもしてねぇだろ」

「してなくないよ」


剣ちゃん、なにもわかってないんだな。

それがもどかしくて、私は剣ちゃんに詰め寄る。


「だって、剣ちゃんの存在が犯人を牽制してくれたから、私は体操服を切られるだけですんでるんだから」

「わかった、お前の言いたいことは十分わかった。だからお前はいいかげん……服を着ろ!」

――あ、下着姿だったの忘れてた。

「ご、ごめんなさいっ」


私は慌てて剣ちゃんに背を向けると、ロッカーのハンガーにかけてあった制服に着替える。

それから私たちは間一髪、授業終了のチャイムが鳴ると同時にバタバタと更衣室を出たのだった。
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