イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
意外な一面
念のため、体操服が切られたことは先生に報告をした。
どこに自分を狙っている人間がいるかわからない。
そんな恐怖と隣り合わせで、一日学園で気を張って過ごしたあと……。
屋敷に帰ってきた私と剣ちゃんは、1階にあるホールに直行した。
明日、お父さんの出席するパーティーに参加するので、剣ちゃんとダンスの練習をするのだ。
「いち、に、さんっ」
おぼつかない足でワルツのステップを踏む剣ちゃんに、私は声をかけてあげる。
「俺はこういうのは向いてねぇんだよ」
「一回も踊ったことないの?」
「あのなぁ、一般家庭でダンスする機会なんて普通はそうそうねぇぞ。ただ、最近になって親父がやたらマナーにうるさくなったな」
「そうなの?」
「あぁ。今思えば、お前のボディーガードとして社交界に出る機会も増えるからなんだろうけどよ」
「そっか……」
家族の話をするとき、剣ちゃんは苦しそうな顔をする。
その表情を見たら、なんて声をかけていいのかわからなくなった。
「あー、やっぱだりぃ。俺、ダンスのときはどっかでサボるわ」
そう言って、剣ちゃんはぱっと私から手を離すとその場を立ち去ろうとする。
「待って!」
私はとっさに、剣ちゃんの腕をつかんで引き留めた。