イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「あ……」


その仕草が妙に色気があって、こんな状況にもかかわらずついつい見惚れてしまう。

整った顔立ちだな、とは思ってたけど……。

近くで見ると、月光に照らされて、いっそう彼の精悍な顔がはっきりと見えた。

細身なのにほどよく筋肉がついた体つきに、今しがた前髪をかき上げた手は骨ばっていて、指も長い。


「ほえ〜」

男らしい彼を見つめていたら、思わず間の抜けた声がこぼれた。


「……んだよ、変な声出すな」

「あっ、すみません! かっこいいなって思ったら、勝手に出ちゃいました」


思ったままを正直に伝えると、男の子は目を見張ったままその場に固まる。

そんな彼の様子に首をかしげつつ、私は男の子に駆け寄ると、その手を両手で握った。


「それにしても、お強いんですね!」 

「近い、離れろ」


男の子はぎょっとしていて、私につかまれていた手を引っこ抜く。

そのとき、バルコニーにお父さんと同い年くらいの年配の男性がやってきた。


< 5 / 150 >

この作品をシェア

pagetop