イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「剣斗、パス!」

「おう」


友だちからボールを受け取った剣ちゃんは、素早いドリブルでゴールに近づく。


「行かせるかよ!」


ディフェンスの男の子が前に立ちふさがるも、剣ちゃんはフェイントをして追い抜いた。


「もらった」


剣ちゃんは自信たっぷりに笑うと、ゴールを決める。

それに剣ちゃんのチームメイトたちは、歓声をあげる。

剣ちゃん、すごく生き生きしてる。

やっぱり、この高校にいたかったんじゃないかな。

そう考えて心が沈んでしまう私に、剣ちゃんが「おい」と駆け寄ってきた。


「一緒にやるか?」

「へ? む、無理だよっ」


自慢じゃないけど、運動神経だけは皆無な私。

絶対にチームの足を引っ張る。


「無理じゃねぇ、俺がいるんだから」


不敵に笑う剣ちゃんに手を引かれて、私は強制的に試合に参加することになった。


「愛菜ちゃん、パスするよー」


同じチームの男の子が私に向かって、ボールを投げる。

心の準備、できてないよっ。

あわあわしながらも、両手を伸ばす。

けれども、私はボールを顔面で受け止めてしまった。


「ふがっ」

「ええっ、愛菜ちゃん!? 大丈夫? ごめん、優しく投げたつもりだったんだけど……」


私にパスした男の子が申し訳なさそうに謝ってくる。

すぐに剣ちゃんも駆け寄ってきて、私の頬を両手で包むと顔を上げさせた。


「大丈夫か?」

「うん、痛いけど……ふふっ、ちょっと面白かった!」

「おいおい、能天気だな、ほんと」


笑っている私を見た剣ちゃんも、表情をゆるめる。

「つーかお前、鼻真っ赤」

「ええっ、やだ! 恥ずかしい」


両手で鼻を隠すと、剣ちゃんは意地悪く笑って私の手首をつかみ、顔から外させる。


「ぶはっ、トナカイみてぇでかわいいんじゃね? もっとよく見せろって」

「むうっ、いじわる!」


抵抗もむなしく、剣ちゃんの力にかなわなかった私は真っ赤な鼻をさらす羽目になった。

すると、剣ちゃんは笑いを噛み殺しながら私の鼻先を指でつつく。


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