イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「俺の力の使いどころってやつが、たぶんお前のそばにある気がする」


なんだろう。
この全身の血が沸騰するみたいな、ずっと息を潜めていた感情が目覚めるみたいな感覚は。


「誰かを守る意味とか、強さの意味とか、お前といれば、見つけられる気がすんだよ」


意味深な言葉を残して、剣ちゃんは友だちのもとへ戻ってしまう。

その背中を見送りながら、私は鳴りやまない胸をそっと両手で押さえていた。



午後3時、剣ちゃんの高校を出た私たちは屋敷までの道のりを肩を並べて歩く。


「今日はありがとう、剣ちゃん」


改めてお礼をすると、剣ちゃんは私をチラリと見た。


「あ? なにが」

「剣ちゃんの大事な人たちに会わせてくれたでしょ? 私を内側に入れてくれたみたいで、うれしかったの」

「内側?」

「うん、剣ちゃんってどこか一匹狼みたいなところあるから、誰かを頼ったりしなさそうっていうか……。あんまり、自分のことを話したりしないでしょ?」

「あぁ、面倒だからな」

「ふふっ、でも……今日は剣ちゃんのことをたくさん知れたから」


心を許した友だちの前だと、どんな顔で笑うのか。

バスケがすごくうまいこと。

ゴールを決めたときの剣ちゃんがものすごくかっこいいこと。

そのどれもが私にとっては、うれしい発見だった。


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