イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「ここ、いい?」


私の隣の席の背もたれに触れる雅くん。

断るのも感じ悪いよね。

仕方なくうなずくと雅くんが隣の椅子に腰かけた。


「俺がきみのお父さんと敵対する派閥の政治家の息子だから、警戒しちゃうかな? それとも、俺自身が怖い?」

「えっ!?」


私の気持ち、見透かされてる? 
やっぱり、態度に出てたんだ!

私は雅くんのほうに身体を向けて、バッと頭を下げる。


「ご、ごめんなさい!」

「愛菜さんは素直だね」


くすくすと笑う目の前の雅くんからは、いつもの不気味さがない。

私が雅くんのことを誤解してただけなのかも。

ちゃんと、話してみたいな。

怖い気持ちはいったん胸の奥にしまって、私はいつもならそらしてしまう雅くんの目をしっかり見つめる。


「私、雅くんのことをなにも知らないのに勝手に怖がって……本当にごめんなさい。今からでも遅くなければ、お友だちになりませんか?」


握手を求めるように手を出すと、雅くんはうつむいた。


「きみはやっぱり、森泉先生……お父さんに似てるね」


雅くんの肩が小刻みに震えている。

まさか、泣いてる!?
私、そこまで雅くんを追い詰めてたんだ……。


「雅くん、本当にごめんね」


下を向いた雅くんのことが気になって、私はその顔を覗き込む。

すると、雅くんはゆがんだ笑みを浮かべていた。


「剣斗くん、だっけ? 彼から忠告されなかった? 俺に近づくなって」

「それ、は……」


はっきり肯定するのは気まずくて言いよどんでいると、雅くんはくすくすと笑った。


「なのに近づいてくるなんて、怖いもの知らずなのかな。それとも俺を信じてくれてるの? そのどっちもか」


雅くんは勝手に納得した様子で、私の返答を待たずにどんどん話を続ける。


「人を疑わないにもほどがあるよ。あ、あとね。俺、きみとは友だちになりたくない」

「え?」


きっぱりと拒絶されて、私はショックを受ける。


「だって、俺はきみの恋人になりたいんだから」

「そんな冗談、笑えない」

「冗談じゃないよ。俺はきみと、もっと親密な関係になりたいんだ」


不意にガシッと手首をつかまれ、強く引っ張られる。


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