イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
抑えきれない感情【side剣斗】
愛菜が部屋を飛び出したあと、俺は壁に背を預けるようにして座り、激しい後悔とともに前髪をかき上げて宙を見上げる。
「バカか、俺は……」
愛菜を傷つけた。
あいつがいつものほほんとしていられるように守ってやるって言ったのは、ほかの誰でもなく俺だっていうのに。
「なのに、いつもぼさっとしてるからだろって……どの口が言ってんだよ。完全に俺の八つ当たりじゃねぇか」
自分でつぶやいておきながら、情けなくなった俺は前髪をぐしゃりと握る。
愛菜を抱えて海に飛び込んだとき、心の底からこいつを死なせたくねぇって思った。
あのどっか抜けた笑顔をいつまでも見ていたい。
だからあいつが人を疑えないぶん、俺が気を張ってればいい。
あいつの心も身体も全部守ってやりたい。
「愛菜が、好きだから……」
この気持ちは嘘偽りない、俺の本心だ。
なのに、どうして優しくしてやれねぇんだ。
雅に触れられてる愛菜を見た瞬間、怒りがこみあげてきて、自分でも制御できなかった。
気づいたら雅を投げ飛ばしてて、気づいたら愛菜に噛みついていた。
これじゃあ、雅よりも俺のほうが危険じゃねぇか。
不甲斐ない自分を責めていたとき、空き部屋の入り口に見知った男が立つ。
「矢神? お前、こんなところでなにをしている」
いぶかしむように眉をひそめて、中に入ってきたのは学だった。
「お前こそ、なんの用だよ」
「生徒会の仕事だ。先日、テニス部の部室に雨漏りが見つかってな。工事の間、この空き教室を部室として使えるか、この目でたしかめに来たんだ」
そういや、こいつ生徒会長だったな。
「それで、矢神はなにをしている」
「……頭を冷やしてんだよ」
追及されるのが面倒で視線を床に落とすと、学が近づいてきて隣に立つのがわかった。
「森泉とケンカでもしたのか」
「うっ」
こいつの洞察力どうなってんだよ。
鋭すぎて怖ぇ。
「沈黙は肯定してるのも同じだぞ、矢神。それにしても、珍しいこともあるもんだな」
「珍しい? なにがだよ」
視線を学に向けると、腕を組んで窓の外を眺めていた。
「バカか、俺は……」
愛菜を傷つけた。
あいつがいつものほほんとしていられるように守ってやるって言ったのは、ほかの誰でもなく俺だっていうのに。
「なのに、いつもぼさっとしてるからだろって……どの口が言ってんだよ。完全に俺の八つ当たりじゃねぇか」
自分でつぶやいておきながら、情けなくなった俺は前髪をぐしゃりと握る。
愛菜を抱えて海に飛び込んだとき、心の底からこいつを死なせたくねぇって思った。
あのどっか抜けた笑顔をいつまでも見ていたい。
だからあいつが人を疑えないぶん、俺が気を張ってればいい。
あいつの心も身体も全部守ってやりたい。
「愛菜が、好きだから……」
この気持ちは嘘偽りない、俺の本心だ。
なのに、どうして優しくしてやれねぇんだ。
雅に触れられてる愛菜を見た瞬間、怒りがこみあげてきて、自分でも制御できなかった。
気づいたら雅を投げ飛ばしてて、気づいたら愛菜に噛みついていた。
これじゃあ、雅よりも俺のほうが危険じゃねぇか。
不甲斐ない自分を責めていたとき、空き部屋の入り口に見知った男が立つ。
「矢神? お前、こんなところでなにをしている」
いぶかしむように眉をひそめて、中に入ってきたのは学だった。
「お前こそ、なんの用だよ」
「生徒会の仕事だ。先日、テニス部の部室に雨漏りが見つかってな。工事の間、この空き教室を部室として使えるか、この目でたしかめに来たんだ」
そういや、こいつ生徒会長だったな。
「それで、矢神はなにをしている」
「……頭を冷やしてんだよ」
追及されるのが面倒で視線を床に落とすと、学が近づいてきて隣に立つのがわかった。
「森泉とケンカでもしたのか」
「うっ」
こいつの洞察力どうなってんだよ。
鋭すぎて怖ぇ。
「沈黙は肯定してるのも同じだぞ、矢神。それにしても、珍しいこともあるもんだな」
「珍しい? なにがだよ」
視線を学に向けると、腕を組んで窓の外を眺めていた。