明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
家族になりたくて
それからさらに一カ月。

空には雪がハラハラと舞い寒くてたまらないものの、信吾さんがよく来てくれるようになったのもあり直正は元気いっぱい。

しかし、実家との交渉は難航していて、結婚の件は進展もない代わりに取り下げもない。

そしていまだに、造船業を継ぐようにとも言われているようだ。


「直正、雪合戦したことあるか?」
「雪合戦って?」


そうか。一度も経験がないかも。


「知らないのか。それじゃあ庭でやろう。八重、直正にもう少し着こませてやって」
「はい」


日曜の今日は信吾さんも非番で、一日ここにいられる。

家にいるときは着物姿が多い彼だけれど、雪合戦をするからとわざわざスラックスに着替えてきた熱の入れよう。

直正はもちろんだが、信吾さんも楽しそうだ。

直正にはまだ彼が本当の父だとは告白していない。
私たちの間の問題がすっかり解決したら話そうと決めている。
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