明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「信吾をたぶらかしやがって!」
信吾さんの話など聞く素振りもないお父さまは、声を荒らげながら近寄ってきて、私に拳を振り上げる。
殴られることを覚悟した瞬間、信吾さんの体が立ちふさがり吹き飛んだ。
私の代わりに殴られたのだ。
「信吾さん!」
「なんのつもりだ。この女にかばう価値などない。目を覚ませ」
目を血走らせるお父さまは、倒れ込んだ信吾さんに駆け寄った私に鋭い眼光を向ける。
私はその場に正座をして頭を下げた。
「父がとよさんに大けがをさせたこと、本当に申し訳ございませんでした。謝罪したところで許していただけるわけがないことは百も承知です。ですが、私には他になにも――」
「うるさい。なにも聞きたくないわ!」
お父さまの怒りはもっともだ。
頭を下げ続けていると、私の隣に信吾さんも正座をしたのがわかった。
「申し訳ございません」
「えっ……」
信吾さんまでもが謝罪を始めたので、唖然とする。