明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

「なぜ信吾が!?」
「八重は私の妻になるのです。家族が起こした過ちを謝罪しなければならないのなら私も同じ」


信吾さんの発言に耳を疑う。

とよさんの兄という立場より、私の夫という立場を優先しようというの?


「馬鹿な」
「私はとよの事故以来、怒りと憎悪の感情に支配されて生きてきました。しかし、それが苦しくなかったわけではありません。もちろん、とよから自由を奪った人間は憎い。ですが、このどす黒い感情に一生支配されて生きていくのかと、どこかで絶望もしておりました」


信吾さんは顔を上げ、お父さまをしっかりと見つめて言葉を紡ぐ。


「八重に出会い一緒に過ごしているうちに、私は自分を取り戻したような感覚がありました。笑ってもいい。楽しいという感情を持ってもいいのだと。肩の力が抜け、ようやく息が吸えました」


そんなふうに思っていたとは知らなかった。
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