明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

彼と一緒なら、必ず充実した笑いの絶えない未来が待っている。


挙式には、横須賀から佐木さんも駆けつけてくれ、津田紡績を代表して一ノ瀬さんまでも参列してくれた。


津田紡績は一旦退職する手はずになっている。

直正に随分我慢させてきたので、もう少し一緒にいる時間を取りたいのと、信吾さんが私に休息を勧めてくれたからだ。

彼はひとりで直正を産み、必死に育ててきた私が疲弊しているのに気づいていた。


挙式には母や兄も参列を許され、大勢の祝福の中、私たちは最高に幸せなひとときを過ごした。


「真田さんおめでとう。本当によかった」


佐木さんが私に声をかけてくれる。


「娘を嫁にやる父親の心境で、寂しくてたまらないと言っていたのは誰だ」


すると隣で一ノ瀬さんが茶々を入れる。


「佐木さんは命の恩人です。佐木さんがいらっしゃらなかったら、直正を産むことすらできなかったかもしれません」


横須賀で彼に出会えたのが幸福の始まりだったのかもしれない。
< 281 / 284 >

この作品をシェア

pagetop