明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
齢、二十代半ばであろうその男のうしろに、同じような風貌の男がさらに立っていて、表情が引きつった。
「どいていただけます?」
「そんなに怖い顔しなさんな。怒りたいのはこっちだ」
なれなれしく話す男は、突然私の右手首を握る。
その瞬間、抱えていた大福の入った袋が転がり落ちた。
「俺はなんの苦労も知らず、のうのうと生きてらっしゃる華族さまが大嫌いでね。腹が立ってしょうがない」
私の手首をつかむその手にじわじわと力を込めていく男は、うしろの男にチラリと視線を送りなにやら合図をしている。
怖い。なにをされるの?
数メートル先の大通りには人が行きかっているのに、残念なことに路地には誰も見当たらない。
それでも、叫べば誰かに届くかも。
「助け――」
大声をあげようとしたが口を手でふさがれ、さらにはもうひとりの男に左腕もつかまれて、全力でもがき抵抗した。
けれども、男ふたりに敵うはずもない。