死者の怒り〜最期のメッセージ〜
「離婚させられて、美雪はどんどん情緒不安定になっていきました。「許さない」怒り狂い、自分を傷つけて……!!」

青野一は大声で泣き始める。藍と大河は、泣き続ける青野一を優しさと憂いが混じった目で見つめていた。青野一の想いが痛いほど伝わってくる。

「……すみません、大人なのにこんなに泣いてしまって……」

青野一が謝り、大河が「そんなことないですよ!好きな人があんな目にあっていたら当然です!」と泣き出してしまいそうな目を向ける。

藍も大河と同じような目をしながら、部屋の中をぐるりと見回す。すると、ワインボトルが置かれているのを見つけた。しかし、ぶどうではなくさくらんぼの絵が描かれている。

「あのワインは……?」

藍が訊ねると、青野一は「美雪に渡そうと思ってたんです。美雪はぶどうアレルギーでさくらんぼのワインしか飲めないんですよ」と微笑んだ。

「……そうですか……」

お礼を言い、藍と大河はアパートから出る。赤い彼岸花が咲き乱れていた。
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