My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「む、無理ですこんな格好!」
確かに暑かったけれど、包みから出したどう見てもビキニな衣装を見て私は首を大きく横に振る。確かに街行く女性の中にはそういう格好の人もいたけれど、泳ぎに来たわけでもないのにこんな格好は出来ない。
「大丈夫だって、絶対可愛いって! な、ラグもそう思うだろ?」
「知るか!」
「私は今の格好で問題無い」
「え~折角セリーンにも似合いそうなの買ったのになぁ~」
「ふざけんな!」
そこで怒り出したのはセリーンではなく、ラグだ。包みを投げ返し続ける。
「てめぇ、まさか観光目的で降りたわけじゃねぇだろうな」
「違うって。言ったろ、俺はティコを、もしくはティコの代わりになるような甘~いお菓子を手に入れるために降りたんだって」
「それで見つかったんですか?」
さりげなくビキニな衣装を仕舞いつつ訊くと、アルさんは急にガクンと肩を落として首を横に振った。
「それがさ~聞いてくれよ。なんかお菓子だけを狙った盗賊が出るとかでなかなか置いてる店が無くってよ。やっとあるって店を見つけたんだけど、子供にしか売らねぇっていうんだぜ」
その言葉にラグの眉がぴくりと跳ね上がった。
「ってことでラグ、お前が来るのを待ってたってわけだ」
「断る!!」
調子良く肩に乗せられた手を容赦なく叩き落としてラグが怒鳴る。
「え~」
「え~じゃねぇ! 無いなら無いで諦めろ!! オレはさっさとクレドヴァロールに行きてぇんだよ!」
「わかってるって。だから、今お前がパっと小さくなってくれりゃお菓子も手に入ってすぐにまた出発出来んだろ?」
「そうだ、さっさと術を使ってしまえ」
セリーンまでもが目をキラキラさせて加わりラグのこめかみに血管が浮かぶのが見えた。
「てめぇらはこんな時だけ息合わせやがって~~」
「あ、でもよ。その賊のことでちと気になる噂を聞いたぜ」
「噂?」
急に神妙な顔つきになったアルさんのその話に、私たちは息を呑むことになる。
「その賊に、金髪の高貴そうな男が囚われてるらしいってな」
「!!」