My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「あーびっくりしたー。急に飛びかかってくるんだもん」
言葉の割に余裕の声音でルルデュールは続ける。
「もしかしてソレがここ守ってるモンスターってやつ?」
そのモンスターが標的である王子その人であることはまだバレていないみたいだ。
再びルルデュールの視線に捕まったツェリは低く唸り声を上げながら威嚇するように牙を剥いた。
「戻れ! お前さんが敵う相手じゃない!!」
「お逃げください!」
アルさんとクラヴィスさんがほぼ同時に叫ぶ。
だがツェリは退こうとしない。
「あーあ、折角持ってきた火、こんなことに使っちゃった」
溜息交じりに言いながらルルデュールは墨となった木片をぽいと投げ捨てた。
(これでもう炎は使えないってこと……?)
少しほっとするが、彼にはまだあの風の術が残っている。――そう考えた直後だった。
「オマエのせいだよ。ばぁーか!」
そんな子供じみた罵声と共にルルデュールがツェリを指差した。
まずい! ――皆がそう思っただろう。
だが、
「ぅぐっ……っ」
次の瞬間呻き声を上げ身体をよろけさせたのは、ルルデュールの方だった。
(――え?)
彼の腕に見覚えのあるナイフが突き刺さっていた。
はっとして横を見ると小さなラグがセリーンから離れ、ルルデュールの方を睨み据えていた。
「いい加減にしやがれ!!」
その怒鳴り声は夜の闇を震わせた。