My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
11.ルルデュール
「好き勝手しやがって……アル、お前もだ!」
「え! 俺も!?」
ビシっと指差されたアルさんがびっくりして自分を指差す。
クラヴィスさんも似たような表情でこちらを見ている。
「何こんなガキに手間取っていやがる! お前は女子供に甘過ぎなんだよ!」
「いや、でもそれ俺のいいとこ――」
アルさんが反論しかけたところで、ピィーーっ! という高い音が響いた。
見上げると窓から身を乗り出したドナがあの笛を口にくわえていて慌てて視線を戻す。ツェリが元の姿――“ツェリウス王子”に戻ってしまうと思ったのだ。
だがツェリは獣の姿のまま、くるりとルルデュールに背を向けこちらへ走って戻ってきた。
――そういえば初めてツェリと遭遇したときも笛の音が聞こえた直後に去って行ってしまった。
(もしかして、音の高さによって違うの……?)
「ドナちゃん、ナイス!」
アルさんの明るい声に視線を戻す。
笛の音色のことは気にはなったが、とにかく今はツェリがルルデュールから離れてくれたことにほっとする。
と、クラヴィスさんが自分も主の元へ戻ろうとしたのだろう長剣を支えに立ちあがり、しかしやはりすぐに膝をついてしまった。
アルさんが慌てたようにそれを支えたときだ。
「ねぇ、ガキとか子供とか……、さっきボク嫌いだって言わなかったっけぇ」
聞こえてきたその低い声音にギクリとする。