My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
皆が再び身構える中、ルルデュールは自ら腕に突き刺さったナイフを引き抜いた。
離れていてもその嫌な音が聞こえた気がして鳥肌が立つ。
相当痛みを感じているはずなのに、しかも“子供”と言われまた激怒しているものと思ったのに、顔を上げた彼は笑っていた。
「ふっふー、自分の血、久しぶりに見ちゃったぁ」
そして己の血のついたナイフをうっとりと眺めながら漆黒の空へと掲げた。――その姿に狂気を覚える。
「そっかぁ、キミもストレッタの術士なんだっけ?」
ナイフの柄にはめ込まれたストレッタの紋章を見たのだろうか。
ルルデュールはラグに視線を送り、続けた。
「なんで術士がこんなモノ持ってるの? 術士なら術を使えばいいのに」
「うるせぇ!」
逆鱗に触れられたラグが怒鳴る。
「だってさ、こんなんじゃボクは殺せないよ?」
可笑しそうに言って、ルルデュールはナイフを背後の草むらへと投げ捨てた。そしてその掌を傷口に当てる。
癒しの術をかけているのだとすぐにわかった。
「ほ~ら、治っちゃった」
ね、と腕を上げて見せながら無邪気に笑うルルデュール。
ラグの舌打ちが聞こえた。
「で? 今度はキミが遊んでくれるのぉ?」
可愛らしく小首を傾げる少年。