My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
そう叫び近づいてくるラグに向け両手を突き出した。
「風の刃を此処に!」
「風を此処に……!」
ルルデュールとアルさん、二つの声が重なる。
直後その声によって生み出された二つの風が轟音を立て再びぶつかり合った。
その中心で小さな身体が宙を舞うのを見た。
――ラグ!!
声にならない悲鳴が喉から漏れる。
風の中で彼の小さな身体が見えない刃によって斬られていく。
その顔が苦痛に歪む。
「おい!?」
セリーンが耐えられないというようにアルさんに向かい声を荒げた。
「大丈夫だ!」
すぐに返ってきた確信に満ちた答え。
そして気付く。――ラグを包む風が変わっていた。
その風は彼を傷付けることなく、ただ彼を乗せていた。
まるで空中を泳ぐように、風に導かれるままラグはまっすぐ視線の先へと向かっていく。
「なっ!!」
ルルデュールの目が驚愕に見開かれる。
直後、彼の肩口にまともにラグの飛び蹴りが入った。
ルルデュールの身体が地面に叩きつけられ、その後方にラグが綺麗に着地する。同時彼を包んでいた風が音もなく消え去った。
髪留めが切れてしまったのか、解けてしまった長い髪を鬱陶しそうに払いラグがゆっくりと立ち上がる。
その手には、先ほど投げ捨てられた彼愛用のナイフがしっかりと握られていた。