My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「よっし!」
頭上からの歓声で我に返る。
見上げるとドナが勝利を確信したかのように両手を握りしめていた。
そしていつの間にかその傍らには同じ方向を食い入るように見つめる男の子3人とモリスちゃんの姿があった。
ルルデュールは地べたに倒れたまま動かない。今の衝撃では脳しんとうを起こしていてもおかしくない。
――これはチャンスだ。
そんな雰囲気が皆から伝わってくる。
ラグがナイフを手にルルデュールに近づいていく。その表情は顔にかかった長い髪のせいでわからない。
ルルデュールは暗殺者。
少年の姿をしているけれど、人の命をなんとも思わない、笑いながら人を傷付けることが出来る、恐ろしい刺客。
だからこそ。
(このチャンスを逃したら、こちらが……王子やドナ達が危ない)
そう、頭ではわかっているのに。
「ラグやめて!」
気付けばそんな叫び声が自分の口から飛び出していた。
ラグがびくりとその足を止めこちらを見る。
――その声に、反応したかのようだった。
「なんでぇ!?」
怒鳴り声――いや、“金切り声”という表現の方が近いだろう声と共にルルデュールの周りに旋風が巻き起こり、その身体がふわりと起き上がった。
ラグが再び身構える。
私は自分の口を両手で押さえていた。
(私のせいだ……!)