My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
大きくなったラグの頭をぐしゃぐしゃっとかき回すアルさん。
いつもならその手を邪険に払う彼が俯いたまま動かない。
アルさんが何か声をかけていたがこちらには聞こえなかった。
「さーてと、こいつどうするか」
腰に手を当てアルさんが足元のルルデュールを見下ろし、どきりとする。
――そのときだ。
「!!」
一迅の強い風がアルさんとラグを襲った。
瞬間ルルデュールが目を覚ましたのだと思った。だが違った。
その風はぐったりとしたルルデュールの身体をあっという間に空へと攫っていった。
それを目で追い気付く。――夜空に人が浮いていた。
ルルデュールと同じ、闇に溶け込むような漆黒のローブを身にまとったその人物は腕を広げ小さな身体を受け止めた。
「仲間か」
セリーンの悔しげな声。
(そんな……!)
ルルデュールの仲間ということはユビルスの術士。そして王子を殺めに来た暗殺者であるということだ。
二人目の敵の出現に絶望感が押し寄せる。
「全く。ついて来て正解でした」
溜息交じりの声が聞こえた。――低く、冷たい男の人の声。
「しかし、まさかこんな所で再び貴方と相見えようとは」
――え?
暗闇のせいで、その視線がどこを見ているのか、それが誰に向けられた言葉なのかわからない。けれど。
「お久しぶりです。デイヴィス教師」