My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
皆の視線がアルさんに集中する。
「? 誰だ」
当のアルさんも思い当たらないようだ。
訝しげなその問いかけに空にいる人物が小さく笑った気がした。
「あぁ、あの頃は“アル君”と呼んでいましたっけ」
「! ――まさか、サカード!」
ショックを受けたように声を上ずらせるアルさん。
やはり知り合いだったみたいだ。
(アル君だなんて、余程親しかったってこと?)
「思い出してもらえたようですね」
「……お前、ユビルスにいるのか?」
「えぇ、今では貴方と同じく教師をしています。この子も生徒の一人なのですが、見ての通りの問題児でしていつも苦労させられています」
「そっか……。なぁ、サカード。昔のよしみで頼むんだが、そいつ連れて今すぐユビルスに帰ってくれないか」
「えぇ。そのつもりですよ」
あっさりとした承諾に驚く。
「任務は完全に失敗。貴方が此処にいたことも要因の一つですが、目的を忘れて暴走するようではプロとして失格です」
感情も何もこもっていない、ただただ冷たい事務的な声。
「それにこの子は街中で術を使用しました。極秘で遂行するようにという先方の意思を無視して、ね」
「……お前いつから見てたんだ?」
「この子のことはユビルスを出てからずっと見ていましたよ」
その言葉にぞっとする。
ということは、彼はずっと私たちのことも見ていたのだ。私たちがルルデュールに気を取られている間も、ずっと。
「生徒を見守るのが教師の役目ですから」