My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
言っていることは極まともなのに、感情がこもっていないからか、見守るというより“監視”という意味に聞こえた。
「先方には伝えなくてはなりませんね。ツェリウス王子の護衛に貴方と、ラグ・エヴァンスがついたと」
「あー、引き受けたのは俺個人で、こいつも、ストレッタも関係ねぇけどな」
「相変わらずですね……。それでは、目を覚ますとまた厄介ですのでこの辺りで失礼します。お元気で、デイヴィス教師」
「あ、あぁ。お前もな、サカード」
そして、その人は音もなく闇に消えていってしまった。
一瞬辺りが静まり返って、思い出したように木々のざわめきや虫達の声が耳に入ってくる。
「……ま、まぁ、っつーわけで。とりあえずはもう安心ってことだ。みんな、お疲れーい!」
アルさんが少しぎこちないながらも笑顔でこちらに手を振るのを見て、私は長い溜息とともにその場にヘナヘナと座りこんでしまった。
――先ほどの術士とアルさんとの関係、そして今だ俯いたままのラグのこと、気になることはたくさんあるけれど。
(は、ははは。とりあえずは終わったんだよね)
長く張り詰めていた緊張の糸が切れたせいか変な笑いが口から漏れてしまっていた。
と、頭上からも同じような乾いた笑い声。
見上げると、丁度引きつった笑みを浮かべたドナと目が会って、私たちはもう一度力なく笑い合った。