My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
12.追憶の中の歌
セリーンとクラヴィスさんが剣を収めるのを横目に私はラグ達の元へ向かう。
――ラグのことが気になった。
先ほど風の中で受けた傷も心配だけれど、未だ彼が俯いている理由。
おそらくは先ほどルルデュールに言われた“悪魔の仔”、そして“レーネ”という言葉が原因だろう。
「ラグ平気? さっきの傷……」
近づき見ると、やはり服がところどころ破れ肌が出ている部分には出血が見られた。
ブゥも頭から落ちそうになりながらそんな相棒を心配そうに見下ろしている。
「平気平気!」
そう明るく答えてくれたのはラグではなくアルさんだ。
「こんな傷自分で治せるもんな~って、今はそうもいかないのか、俺が癒してやろうか?」
「ごめんなさい!」
二人に向かい私は深く頭を下げる。
「カノンちゃん?」
「私さっき、やめて、なんて……」
――ただ見たくなかっただけだ。
ラグがあの暗殺者にとどめを刺すところを見たくなくて、そんな自分の勝手であの場にいた皆を再び危険に晒してしまった。
もしかしたらあの時私のせいで誰かが更に傷ついていたかもしれない。――最悪、命を落としていたかもしれない。
少なくとも、ラグが今俯いているのは私のせいだ。
「いやいや、あんときカノンちゃんが止めてなかったらサカードが止めに入っただろうし。そしたら逆にコイツがやられてたかもしんないし、カノンちゃんが気にすることはなーんも無いんだぜ!」
アルさんが笑顔で言ってくれる。
「でも、」
やはりラグが気になって顔を上げ、気付く。
彼の額にいつも巻かれている布が無かった。おそらくそれも先ほどの戦いで切れてしまったのだろう。――そこまで考えて、私は目を見開く。
そういえばこれまで見たことが無かった彼の額に、見覚えのある紋様が描かれていた。