My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
それを聞いた店の主人はもう一度眉根を寄せ私たちを見回してからふぅと息を吐き話してくれた。
「さっき話した通りさ。ここ最近菓子だけを狙った盗賊が頻繁に出てな。つい一週間程前に山中にあるっていうその根城に自警団の奴らが討伐に向かったんだ。ま、結局返り討ちにあったんだがそのときにどう見ても盗賊にゃ見えない高貴そうな金髪の若い男を見たって奴がいて、貴族のおぼっちゃんでも囚われてるんじゃないかって、今街じゃ有名な話さ」
「そんなに強いのかその賊は」
そう訊いたのはセリーンだ。
「いいや、賊ってよりその根城を守ってるモンスターってのがとにかく凶暴でまるで歯が立たないらしくてな。自警団の奴らもほぼそいつにやられて戻ってきたんだ」
その話を聞いてハっとする。
「あの、そのモンスターってどんな」
「角のあるモンスターだって聞いたけどね」
――やっぱり。
私はセリーンと視線を交わす。
「姉ちゃんは傭兵かい? だったらこの少し先に自警団の詰所があるから寄ってみるといいよ。確か傭兵を雇って新たに討伐隊を編成するとか言ってたからな。詳しい情報も手に入るだろうよ」
私たちはその詰所の場所を聞き、お礼を言って店を出た。そのときもう一度アルさんが主人にお菓子をお願いしていたがきっぱりと断られていた。
「絶対さっきのモンスターだよね!」
「さっきのって、そのモンスターに遭ったのか?」
興奮気味に言った私の台詞にアルさんは驚いたようだ。
ラグは一直線にその詰所に向かっていて私たちもそれに続いていた。
「はい。ついさっきラグが戦って」
「マジか! そんで倒したのか?」
するとセリーンがふんと鼻で笑った。
「術を使えばいいものをナイフで応戦してな。苦戦の末に逃げられたんだ」
「逃げられたわけじゃねぇ!」
ラグがそこだけしっかりと否定する。