My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
あの紋様が消えたりするのだろうか。
角はまた生えてくるのだろうか。
ツェリを見ながらそんなことを考えていると。
「カノン、何を言っているんだ?」
「え?」
セリーンの声に視線を戻す。二人が同じような表情で私を見下ろしていた。
「誰が今モンスターの話をしてんだ」
「ちょっ、失礼だよ!」
私はツェリとクラヴィスさんの方を横目で見ながら慌てて小声で窘める。
確かに今はモンスターの姿だけれど、一国の王子様である彼本人の前でモンスター呼ばわりは失礼過ぎる。
でも幸い彼らには聞こえていなかったようで、私はほっと胸を撫で下ろしつつ小声で続けた。
「ほら、ツェリの角無くなっちゃったでしょ? 今は平気そうだけど、元に戻った時はどうなんだろうって気になって」
「元に戻った時?」
「元に、とはどういうことだ?」
同時に眉根を寄せた二人に私は戸惑う。
ラグの頭に乗ったブゥまでが私を不思議そうに見下ろしていて。
何かが噛み合っていない。
その理由に気付いたのは、その数秒後だった。
「――あぁっ!」
私の上げた大声に皆の視線が集まる。
(そうだ! ラグとセリーンは、ツェリが王子様だって知らないんだった!!)