My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
13.継がれる歌
「まさか、あのモンスターがクレドヴァロールの王子とは……。まぁ、愛しのあの子がそこの男と同一人物であることのほうが信じ難いがな」
ツリーハウスの中。セリーンが大真面目な顔でそんなことを言った。
今この場にラグがいなくて良かったと思いつつ苦笑して私はドアの方を見る。
(もしかしたら聞こえてるかもしれないけど……)
彼は今ドアのすぐ向こうにいる。念のための見張りだ。
――あの後、クラヴィスさんに許可をもらい二人に王子の秘密を話すと、案の定二人は目を丸くしてツェリを見た。
「呪い……。そうか、それでオレのこともわかったってわけか」
そう呟いたラグに、クラヴィスさんが改まった様子で頭を下げた。
「アルディートさんと同じストレッタの術士である貴方にもお願いしたい」
王子が城へ戻るまでの護衛。
ラグは、こちらには全く関心のなさそうなツェリをもう一度見つめ、
「まだ訊きたいことがある。今の姿じゃまともに話もできねぇからな」
そう、遠回しに王子の護衛を引き受けていた。
「アタシも最初はびっくりしたよ。というか、あいつがここに来てから驚くことばっかだ」
ドナがちょっぴり怒るような口調で言う。
彼女が作ってくれた料理を食べ終えた私たち。
お豆がたくさん入った栄養価の高そうなその料理はとても素朴な味で、量は少なかったけれど空腹だった私たちには十分なご馳走だった。
セリーンは初めて口にしたこのパケム島独特の料理に感激さえしているようだった。
その料理はドアの向こうにいるラグや、ツリーハウス下にいるクラヴィスさんとツェリにも振る舞われた。