My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3

 だがドナは軽く笑い言った。

「あいつ川べりで倒れててさ、最初見つけたとき死んでると思ったんだ。まぁただ腹減って弱ってただけだったんだけどな。なーんか可哀想に見えてさ、飯少し分けてやったらついて来ちゃって。襲ってくる気配は無いし、モリスたちも気に入っちゃってさ、そのまま居るのが当たり前になってた」

 ツェリと仲良く過ごしている子供たちを想像して、思わず笑みがこぼれる。
 だが、そこでドナはふうと小さく息を吐いた。

「だからさ、未だに人間のあいつには慣れないんだよな」
「……ドナ、ツェリ――王子とは本当にこのままお別れしちゃうの?」

 思い切って訊いてみる。
 ドナは俯いたまま、笛をぎゅっと握り締めた。

「だって、普通に考えて王子様がこんなとこに居ちゃいけないだろ」
「そうだけど……」
「モリス達は皆寂しがるだろうけどな」

 目を細めてドナは子供たちを見つめる。

「ドナは? 寂しくないの?」

 子供たちを見つめるその顔が曇る。

「……寂しいよ。たったひと月だけど、家族だったんだから。――でも」
「でも?」
「この気持ちがあいつと同じものなのかどうか、わからないんだ」

 心なしか、ドナの顔が赤らんだ気がした。

「あいつは、アタシを好きだって言ってくれた。でも、アタシの“好き”はモリスたちのそれと同じなんじゃないかって」
「家族を好きってこと?」

 ドナはこくりと頷く。そして、思い切るようにして私の前に体を乗り出した。

「なぁ、カノンは、どうやってあいつと恋人になったんだ?」
「へ?」
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