My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3

 こんな話――所謂コイバナをするのは酷く久しぶりな気がした。
 ふと学校にいた頃を思い出す。

「……今は、いない、かな。――前はいたけど」
「あ、もしかして、例の捜しているっていう金髪の?」
「ち、ちがーう!!」

 エルネストさんの優しげな笑顔が浮かんで、またしても一気に顔の熱が上がった。
 彼こそ、この会話をどこからか聞いているかもしれないのだ。なんとなくきょろきょろと視線を動かしてしまう。

 自分を落ち着かせるために、私は過去の淡い恋を思い出す。

「幼馴染の男の子なの。離れてから気付いたっていうか……。あぁ、好きだったんだなぁって思ったんだ」
「ほぉ、カノンにそんな相手がいたのか」

 セリーンが意外そうに言う。

「初恋ってやつかな。今は全然、たまーに思い出すくらいで」

 ――こっちに来てからそれどこじゃないし、そう心の中で付け加えて笑う。

「あ、セリーンは? 初恋の人、どんな人だった?」

 つい悪戯心を出して訊いてみる。完全に修学旅行の夜のノリだった。
 セリーンが少し驚いたように目を瞬く。

「私か? ……恋と言えるかどうかわからないが、もう一度会ってみたい人物ならいるな」

 てっきり、私の初恋はあの愛しの子だ! と来るものと思っていた私は身を乗り出し更に訊く。

「どんな人だったの?」

 するとセリーンはその頃を思い出すようにゆっくりと目を閉じた。
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