My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「遠い昔の話だ。まだ戦う術を知らなかった私を救ってくれた。もう顔もおぼろげにしか憶えていないが、もしまた会えるのなら、もう一度礼がしたいとは思っている」
彼女の、その穏やかな表情を見て、それが彼女にとって本当に大切な思い出なのだとわかる。
(セリーンにも、そんな人がいたんだ……)
と、彼女がパチッと目を開けた。
「あぁ、しかし今の私にはあの愛しの子がいるからな。これは断じて浮気ではないぞ」
そうきっぱりと告げたセリーンに私はこくこくと頷きながらも苦笑してしまった。
「救ってくれた……か」
それまで私たちの話をじっと聞き入っていたドナが小さく呟く。
「あいつは、アタシたちを必死に守ってくれた。それは感謝してるんだ。何度礼を言っても足りないくらいにさ……」
と、そこで「あ~っ」と声を上げ、ドナはそのまま仰向けに寝転んでしまった。
「でもさぁ、やっぱどう考えたってアタシとツェリウス王子じゃ住む世界が違いすぎる。だったら早くいなくなってくれた方がさ、寂しい気持ちも少なくて済むだろ?」
笑いながら言うドナ。
でも、まるで自分に言い聞かせているようだと思った。