My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「その時に、笛の音が聞こえたんです」
「ふえ?」
首を傾げたアルさんに私はラグのときと同じように簡単に説明した。
「その音が聞こえた途端にどこかに行ってしまって……。だから、もしかしたらその盗賊が呼んだのかもって」
「その可能性は高いだろうな」
セリーンも同意してくれた。
――盗賊が吹いたと思わしき笛の音。そしてそこに囚われているというエルネストさんらしき人物。
急に彼に、そして元の世界にぐっと近づけた気がして、私の胸はドキドキと高鳴っていた。
と、アルさんが「あ」と大きな声を上げた。
彼はまるで良いことを思いついた子供のような笑顔で言う。
「俺がそのモンスターと盗賊の奴らをまとめてちゃちゃっと倒しちまえば良くね? そうすりゃお菓子も無くならずに済むし、俺も買えるし、カノンちゃんとラグもあの金髪の兄ちゃんに」
「おいタレメガネ」
私も良い案だと頷きかけたその時、セリーンが続きを遮った。
「セリ~ン、その呼び方はやめてくれって」
「余計なことをするな」
「へ?」
そしてアルさんの顔が思いきり引きつった。……セリーンの目は、完全に据わっていた。
地獄の底から這い上がってくるような低い声で彼女は言う。
「貴様のせいで、私がどれだけあの子に会うチャンスを失っているか……。これ以上邪魔するのならば」
「わ、わかった! わかったって!! 俺はなんも手出ししません! だから剣抜かないで!!」
アルさんの必死な懇願にセリーンは柄に触れていた手をゆっくりと離した。それを見て私はほっと胸を撫で下ろす。