My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
皆の元に戻るとツリーハウス下にいたクラヴィスさんが笑顔で迎えてくれた。
ツェリは先ほどと変わらずその隣に静かに座っていて、しかしやはりこちらを、ドナを見ようとはしなかった。
ドナは彼の方をちらちらと見ていたけれど、結局話しかけることはせず梯子を上り始めた。
(大丈夫かな、二人とも……)
私が気にしても仕方のないことだけれど――そう思いながら梯子に手をかけたときだった。
「おい、どうしたんだ?」
先にデッキに上がったドナの慌てたような声に、急ぎ駆け上って驚く。
ドアの前でアルさんが蹲り小刻みに震えていたのだ。
「アルさん!?」
「あ、あぁ。おかえり、カノンちゃん、ドナちゃん」
その声にいつもの明るさは無く、顔色も明らかに悪い。
「何かあったんですか?」
「いや、ちょっと、愛が痛くて……」
「え?」
「まさかあいつらがまた!?」
ドナが焦ってドアを開け中の子供たちを確認する。
けれど、子供たちは先ほど見た時と同じように皆静かに寝息を立てていて、その枕元で胡坐をかいていたセリーンが私たちを見上げた。
「おかえり。どうした、二人してそんな顔をして。こちらは何も問題なかったぞ」
「あ、ありがとう」
拍子抜けしたようにお礼を言うドナ。
「そうそう、問題なかったよ。……俺の腹以外は」
アルさんの最後ぼそっと付け加えられた言葉で、なんとなくだけれど状況が呑み込めた気がした。
デッキに上がってきたラグが、アルさんの様子を見て眉を顰める。
「あ、ラグ。見張り交代。俺は、もう、ダメ……だ」
そんな言葉を残し、アルさんはその場にガクリと突っ伏した。
「全く情けない。大の男が一番に休むとは」
呆れたように言い放ったセリーンになるべく笑顔で訊く。
「そ、そういえばセリーン、さっきの料理どうだった? うまく出来た?」
「あぁ、見様見真似だったがなんとかなったぞ」
得意げに答えたセリーンに、アルさんが小さく呻いた気がした。