My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
アルさんもふぅと息をついてから、前を行くラグを見た。
「しっかしなんでアイツそんなに小さくなるの嫌なんだろうな。そんな長い時間でも無ぇのにな~」
それはセリーンから熱い抱擁を受けてしまうからだと思います、とは言えずに私は曖昧に笑う。
確かにアルさんだったらセリーンのために喜んで小さくなりそうだ。
「まぁ、術使えなくなるってのは不便だけどよ……ん?」
何かに気付いたようにアルさんが足を止めた。見るとラグも立ち止まっている。彼の前に道いっぱいに人だかりが出来ているためだ。
それは丁度、店の主人から聞いた自警団の詰所前のようだ。
「なんだろう」
言いながら私はラグの方に駆け寄った。彼は案の定すこぶる不機嫌顔だ。
人だかりの中心が気になったが私の背ではつま先で立っても見ることは出来なかった。
「なんか、決闘みたいだな」
すぐ後ろからアルさんの声が降って来た。
「決闘!?」
私が驚き声を上げると、前にいた派手な色の服を着た男の人が振り返り楽しげに教えてくれた。
「1stの傭兵同士らしい。なんでも勝った方が一人で賊の討伐に行くんだと」
そしてすぐにまたその人は前に向き直り、決闘を見ようと背伸びをし始めた。お蔭でやはり私は見えないままだ。
しかし割り込んで行ってまで見たいものでも無い。寧ろどちらかが負けてしまうことを考えたら見たいとは思わなかった。
私は同じ1stの傭兵であるセリーンに話しかける。
「決闘なんてしないで皆で行けばいいのにね」
「自分の取り分が減ってしまうからだろう」
「取り分?」
「報酬のだ。傭兵同士のこういう決闘はそれほど珍しくもない。しかし、そうなると――」
わっと歓声が上がったのはこの時だった。直後剣同士がぶつかる甲高い音がこちらまで響いてきた。
どうやら決闘が始まったみたいだ。